焙煎。そしてカッピング
だいぶ朝晩が涼しくなってきましたが、また少し暑さが戻ってきたようですね。
先日、お客さんと話をしていて、焙煎の話題になりました。
僕らロースターという職業はなかなか馴染みのない仕事です。
よく、コーヒーって最初から茶色いんじゃないんですか!?って驚かれますが、コーヒー豆は、僕らロースターが焙煎という作業を行ってはじめて茶色いコーヒー豆になります。
その焙煎という作業。
要は生豆に熱を与えて水分を抜き、熱による成分の化学変化を起こすということなんですが、まぁこれが奥が深い!
焙煎機の釜の温度を何度まで上げてから豆を投入するのか、どのタイミングでどのようにガス圧を調整するのか、吸気と排気の効率をどう調整するか、豆を投入して何分間で仕上げるか、どのレベルまで焙煎を進めるか。
そもそも豆が固いのか柔らかいのか、水分量はどのくらいか、品種は何なのか、どれくらいのポテンシャルを秘めているのか。
今の気温は何度だ、湿度は何%だ、煙突の煙の抜けの感じはどうなんだ。
焼き上がった豆の味はどうなんだ、酸のロスはないか、フレーバーや甘さが充分に発達しているか、マウスフィールにざらつきはないか、ボリューム感はどうだ、味の輪郭がはっきりと感じられるか、コーヒーが冷めてきたら印象が良くなるのか悪くなるのか、どういう淹れ方が向いているのか、何日目が一番美味しいか。
もう毎日毎回が大騒動です。
理想の焙煎を目指して、考えて考えてどんどん深みにはまっていくこともしょっちゅうです。
でも不思議と心地よかったりもするんだよなぁ。
一筋縄にいかないところが生き物を扱ってるって実感する部分だったり、豆との意思疎通がばっちり合って気持ちいいくらいに焙煎が美味くいったり。
良い素材を使っている自信があるから、今のコーヒーの味に満足はしません。
明日はもっと美味しいコーヒーに仕上げるぞと思ってます。
毎日毎日、焙煎してはデータをとってカッピングして。
その繰り返しがロースターという仕事です。
あと、僕の中での焙煎論というのは、あくまで素材ありきです。
よくコーヒーが美味しいのは自分の焙煎のおかげだ言うコーヒー屋さんもありますが、僕は素材以上の味はロースターには出せないと思っています。
素晴らしく美味しいコーヒーを作っているのはあくまで産地の環境と生産者です。
コーヒーが美味しいのは、そこに丹誠込めて育てた人たちがいるからです。
そういう考えがあるから毎年産地に足を運ぶんです。
そこそこ美味しいコーヒーが欲しいのなら、わざわざ産地まで行く必要はないと思ってます。
正直、日本にいたって美味しいコーヒーは問屋さんから買えます。
とびきりの美味しさ、そして何よりその理由が欲しいから行くんです。
ロースターの仕事は、10点のコーヒー豆からは10点までの味しか出せません。
でも100点のコーヒーからは100点の味を引き出すことができます。
それが120点になることはありません。
要は素材が大事なんです。
これが僕なりの焙煎論です。
そんな深い話をしました。
今日もまた、いつも通りに前回よりも美味しいコーヒーを目指して焙煎機に向かってます。
いつか100点のコーヒーに仕上がることを夢見て。