きっかけ
「伊藤君、焙煎ばせんね。」
7年ほど前、そう言って私に手回しの焙煎機を譲ってくれた方がいました。
その時は焙煎のことはなにも知らず、右も左もわからずに言われるがまま譲ってもらった焙煎機を自宅のコンロの上で回しながら黒焦げのコーヒー豆を焙煎したのが私の初めての焙煎です。
あの時の言葉がなかったら、今の私はありませんし、今のカリオモンズコーヒーもなかったかもしれません。
人の人生というものは本当に不思議なもので、たったひとつの小さなきっかけでそれまでとはまるっきり違ったものになる時があります。
1人の人、1冊の本、1つの道具、1杯のコーヒー。
どんなタイミングでその時が訪れるのかは過ぎてみないとわかりませんが、導かれるという感覚はその瞬間に感じるものなのかもしれませんね。
自分もいつかこんな人間になりたいと、自宅の奥から出てきた懐かしい焙煎機を見て、ふとそんな思いがよぎった12月の寒い日でした。